要旨の書き方:論文の全体を短くまとめる
要旨(アブストラクト)は、研究論文や卒業論文・修士論文で、目的・方法・結果・考察を短くまとめて本文の前に置くものです。授業のレポートにはふつう付けません。要旨に書くこと、書かないこと、書く順番と、例を紹介します。
要旨(アブストラクト)は、論文の全体を短くまとめて、本文の前に置くものです。読み手は要旨を読んで、その論文が自分にとって読む価値があるかを判断します。答えを先に知りたい読み手のための部分なので、序論とは違い、結論まで書きます(「序論の書き方」)。
いつ付けるか
- 研究論文:学術雑誌に載る論文には、ふつう要旨があります
- 卒業論文・修士論文:本文とは別に、要旨を求められることがあります
- 学会の発表:発表の申し込みに、要旨を出すことがあります
- 授業のレポート:分量が多くないため、ふつうは付けません。指定されたときだけ付けます
書くこと
要旨には、本文の四つの部分を、それぞれ一、二文で書きます。
- 目的:何を明らかにしようとしたか(必要なら、背景を一文だけ)
- 方法:誰を対象に、何をしたか
- 結果:何がわかったか(主な結果を具体的に)
- 考察(結論):結果は何を意味するか
字数は、指定に従います(卒論なら400字、800字など)。指定の字数の中に、四つがそろっていることが大切です。
例
本研究では、学習後の睡眠が単語の再生を高めるかを検討した。大学生40名を、学習後に8時間眠る条件(睡眠条件)と、起きて別の課題を行う条件(覚醒条件)に分け、学習した単語の再生数を比べた。その結果、睡眠条件の再生数は覚醒条件よりも多かった。この結果は、学習後に新しい情報が少ないほど忘却が少ないという干渉説の予測に合う。ただし、睡眠中の記憶の定着による説明も残り、両者の区別が今後の課題である。
(例は、説明のための架空のものです。)
書かないこと
- 本文に書いていないこと:要旨は本文のまとめです。要旨にだけある結果や主張を書かない
- 引用や、図表の参照:要旨だけで意味が通じるように書く
- 説明のない略語:使うなら、正式な名前を添える
- あいまいな結果:「興味深い結果が得られた」ではなく、何がわかったかを書く
- 背景の長い説明:背景は一文までにとどめ、目的・方法・結果・考察に字数を使う
書く順番
要旨は、本文を書き終えてから、最後に書きます。本文が固まる前に書くと、本文を直すたびに要旨も直すことになり、食い違いも生まれやすくなります。
- 本文の目的・方法・結果・考察から、要点を一文ずつ抜き出す
- 指定の字数に合わせて、言葉を削り、つなぐ
- 本文と照らし合わせ、食い違いや、本文にないことがないかを確かめる
キーワード
要旨のあとに、論文の内容を表す言葉(キーワード)を三〜五つほど挙げるよう求められることがあります。題名に入っていない言葉でも、その論文を探す人が使いそうな言葉を選びます。