卒業論文の進め方:テーマ決めから提出まで
卒業論文は、授業のレポートと違い、一年ほどかけて自分で問いを立て、確かめ、新しい知見として示す研究です。授業のレポートとの違い、一年の流れの例、指導教員との進め方、研究倫理の手続き、論文の組み立てを紹介します。
卒業論文(卒論)は、大学での学びの締めくくりとして、自分で問いを立て、確かめ、その答えを新しい知見として示す研究です。授業のレポートで身につけてきた書き方は、すべて卒論の土台になります。
進め方や求められることは、大学・学科・研究室によって大きく違います。ここで紹介するのは一般的な流れです。必ず、学科の案内と指導教員の指示に従ってください。
授業のレポートとの違い
| 授業のレポート | 卒業論文 | |
|---|---|---|
| 問い | 課題として与えられることが多い | 自分で見つけて立てる |
| 根拠 | 主に文献 | 自分で集めたデータや資料と、文献 |
| 新しさ | 必ずしも求められない | まだわかっていないことに、何かを加える |
| 期間 | 数日〜数週間 | 半年〜一年ほど |
| 分量 | 数千字 | 学科によるが、数万字に及ぶことも |
| 指導 | 授業での添削 | 指導教員との継続的なやりとり |
| 付けるもの | 要旨はふつう付けない | 要旨、目次、謝辞などを求められることがある |
一年の流れの例
心理学のように、自分でデータを集める研究の例です。分野や学科によって大きく違います。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 前の年度の後半 | ゼミに入り、関心のあるテーマを探す。文献を読み始める |
| 春 | テーマを絞り、先行研究をまとめる(「先行研究のまとめ方」) |
| 初夏 | 研究計画書を書き、指導教員と相談する。必要なら倫理審査を受ける(「研究計画書」) |
| 夏〜秋 | 実験・調査・資料の収集を行う |
| 秋 | データを分析し、結果をまとめる |
| 冬 | 本文を書き、指導を受けて書き直す |
| 提出の前 | 要旨・引用文献・体裁を確かめ、提出する(「要旨の書き方」) |
| 提出のあと | 発表会や口頭試問で、研究を説明する(「発表のしかた」) |
いちばん時間がかかるのは、たいていテーマを絞るところと、データを集めるところです。この二つが遅れると、書く時間がなくなります。
テーマを決める
卒論の問いも、授業のレポートと同じく、深掘りし、明確にし、答えられる大きさに落とし込みます(「問いの立て方」)。卒論では、とくに次の点を確かめます。
- 先行研究で、まだわかっていないことは何か:自分の問いが、すでに答えの出ている問いではないか
- 期間内に答えられるか:データを集めて分析し、書き上げるまでの時間があるか
- 必要な資料や参加者を集められるか:実験の参加者、調査の協力者、資料の入手
- 自分が一年関心を持ち続けられるか
指導教員と進める
- 定期的に進み具合を見せる:うまくいっていないときこそ、早めに相談する
- 書いたものを早く出す:完成してから見せるのではなく、計画書や下書きの段階で見てもらう
- 相談の前に、聞きたいことをまとめておく:何に迷っていて、どんな選択肢を考えているかを書いて持っていく
- 指摘を記録する:受けた指摘と、それにどう対応したかをメモしておく
研究倫理の手続き
人を対象にした実験や調査(アンケート、インタビューを含む)では、多くの大学で、始める前に倫理審査を受けることが求められます。
- 参加者に研究の内容を説明し、同意を得る
- 参加をやめる自由を保障する
- 個人情報を守り、データを適切に保管する
審査には時間がかかるため、計画の段階から日程に入れておきます(「人からデータを集めるときの倫理」)。データの扱いについての不正(捏造・改竄)は、卒論でも許されません(「レポートの不正」)。AI の使い方も、学科や指導教員のルールに従います(「AI を使った執筆の進め方」)。集めたデータを AI に入力するときは、とくに慎重にしてください(「AI に入れてはいけない情報」)。
論文の組み立て
データを集める研究なら、実験レポートと同じ IMRaD の型が基本になります(「実験レポートの書き方」)。文学・歴史・哲学などでは、序章・各章・終章の章立てで書くことが多くあります(「人文系の卒業論文」)。
- 表紙、要旨、目次
- 序論(問題と目的):先行研究のまとめ、問い、目的、仮説
- 方法
- 結果
- 考察(総合考察)
- 引用文献
- 付録(質問紙、刺激の一覧など)
- 謝辞(指導教員や参加者へのお礼。求められたとき)
研究がいくつかに分かれるときは、「研究1」「研究2」と節を分け、最後に全体をまとめる総合考察を置くこともあります。
書き進め方
分量が多いぶん、書く前の設計がいっそう大切になります(「アウトライン」)。
この記事の細目
- 先行研究のまとめ方:何がわかり、何がわかっていないか
先行研究のまとめは、文献の紹介を並べることではなく、これまでの研究で何がわかり、何がわかっていないかを整理して、自分の問いの位置を示すことです。文献を表で整理する方法、まとめる軸の選び方、空白から問いを導く書き方、よくある失敗を紹介します。
- 研究計画書:研究の設計を言葉にする
研究計画書は、何を、なぜ、どうやって明らかにするのかを、実際に研究を始める前に書き出したものです。計画書に書く項目、方法と分析を先に決める理由、実現できるかの確かめ方、倫理的な配慮の書き方を紹介します。
- 要旨の書き方:論文の全体を短くまとめる
要旨(アブストラクト)は、研究論文や卒業論文・修士論文で、目的・方法・結果・考察を短くまとめて本文の前に置くものです。授業のレポートにはふつう付けません。要旨に書くこと、書かないこと、書く順番と、例を紹介します。
- 人文系の卒業論文:章立てで論じる
文学・歴史・哲学などの人文系の卒業論文は、実験や調査の型(IMRaD)ではなく、序章・本論の各章・終章という章立てで書くことが多くあります。章立ての組み立て、各章の役割、資料や作品との向き合い方、進め方を紹介します。