人文系の卒業論文:章立てで論じる
文学・歴史・哲学などの人文系の卒業論文は、実験や調査の型(IMRaD)ではなく、序章・本論の各章・終章という章立てで書くことが多くあります。章立ての組み立て、各章の役割、資料や作品との向き合い方、進め方を紹介します。
心理学のようにデータを集める研究では、卒業論文も IMRaD の型で書くのが基本です(「卒業論文の進め方」)。一方、文学・歴史・哲学などの人文系の分野では、序章・本論の各章・終章という章立てで論じることが多くあります。
章立ての形や、注・参考文献の書式は、学科や指導教員によって大きく違います。必ず、学科の案内と指導教員の指示に従ってください。
(この記事の例は、説明のための架空のものです。)
章立ての例
- 序章 問題の所在と本論文の構成
- 第1章 先行研究の整理:作品の「沈黙」はどう読まれてきたか
- 第2章 前期の作品における沈黙
- 第3章 後期の作品における沈黙の変化
- 第4章 沈黙と同時代の言論
- 終章 結論と今後の課題
- 注・参考文献
各章の役割
| 部分 | 書くこと |
|---|---|
| 序章 | 主題、問題の所在(何が論じられてきて、何が問われていないか)、本論文の問い、扱う資料や作品の範囲、方法、各章の構成 |
| 先行研究の章 | これまでの研究を論点ごとに整理し、本論文の位置を示す(「先行研究のまとめ方」) |
| 本論の各章 | 序章の問いを分けた小さな問いに、一章ずつ答える。章の終わりに、その章で言えたことを短くまとめる(小括) |
| 終章 | 各章で言えたことをつなぎ、序章の問いに答える。扱えなかったこと、今後の課題 |
序章は、実験の論文の序論と同じく、問いを立てるところです(「序論の書き方」)。各章が序章の問いのどの部分に答えるのかを、序章で示しておくと、読み手は全体の流れを見失いません。
章どうしをつなぐ
章立ての論文は分量が多いため、章と章のつながりが見えにくくなりがちです。
- 章の初めに:その章で何を問い、どう論じるかを短く示す
- 章の終わりに:その章で言えたことを小括にまとめ、次の章へのつながりを示す
- 小括を並べて読む:小括だけを順に読んで、終章の結論に向かう筋が通るかを確かめる(「アウトライン」)
資料や作品と向き合う
人文系の論文では、作品・史料・思想家の著作など、一次資料そのものを読み解くことが中心になります(「一次資料と二次資料」)。
- どの版(テクスト)を使うかを決め、明記する:同じ作品でも、版によって本文が違うことがあります
- 本文を引いて、その読みを示す:読みの根拠を、本文の具体的な箇所に求める(「人文系の引用」)
- 先行研究の読みと、自分の読みを区別する:誰の読みかを、出典とともに示す
- 都合のよい箇所だけを選ばない:自分の読みに合わない箇所も取り上げ、どう考えるかを書く
作品の読みは、書き手の視点から生まれます。それでも論文では、その読みを、本文と資料にもとづいて、ほかの読み手が確かめられる形で示します(「「私」の視点と、私がいなくても成り立つ議論」)。
進め方の目安
- 早めに対象を決める:扱う作家・作品・時代・史料の範囲を、早いうちに指導教員と相談して決める
- 読書と資料のノートを作る:作品や資料を読みながら、気づいたことと箇所(ページ・版)を記録する(「文献の読み方とノートの取り方」)
- 章ごとに下書きを書く:全体を一度に書こうとせず、章ごとに下書きを書いて、指導を受ける
- 注は書きながら付ける:あとでまとめて付けようとすると、出典を探し直すことになる(「文献の管理」)
書き手の呼び方
人文系では、論文でも「筆者は」「私は」を使う慣習のある分野があります。学科や指導教員の方針に従い、使う場合も、一つの論文の中でそろえます(「文体と表記」)。