言い換え(パラフレーズ):文献の内容を自分の言葉でまとめる
間接引用の土台になるのが、文献の内容を自分の言葉でまとめる「言い換え」です。語句を入れ替えるだけの言い換えがなぜ危ういのか、意味を変えずにまとめる手順、文献の言い方に合った動詞の選び方を、例とともに紹介します。
レポートでは、文献の内容を自分の言葉でまとめる間接引用が基本です(「根拠と引用」)。その土台になるのが言い換え(パラフレーズ)です。言い換えができると、文献を理解していることが示せ、直接引用に頼らずに自分の論証の中へ文献を組み込めます。
(この記事の例に出てくる文献は、説明のための架空のものです。)
語句を入れ替えるだけでは、言い換えにならない
次の原文を例にします。
原文(山田, 2020, p. 58):忘却の多くは、記憶された情報そのものが失われることによってではなく、その情報を取り出すための手がかりが適切に働かないことによって生じると考えられる。
よくない言い換え
忘却の大部分は、覚えた情報自体がなくなることによってではなく、その情報を取り出す手がかりがうまく働かないことで起こると考えられる(山田, 2020)。
出典は付いていますが、原文の語順と組み立てをそのまま残し、語句をいくつか入れ替えただけです。これは自分の言葉でまとめたことにはならず、剽窃とみなされるおそれがあります。原文の言い回しが必要なら、かぎかっこでくくって直接引用にします。
よい言い換え
山田(2020)によれば、人が何かを思い出せないとき、その記憶が消えてしまったとは限らない。記憶は残っていても、それを引き出すきっかけがうまく働いていないことが多いと考えられるという。
原文の意味(忘却の多くは、情報の消失ではなく、取り出しの失敗による)を保ったまま、文の組み立ても言葉も自分のものになっています。原文が「考えられる」と推測の形で述べている点も、「考えられるという」と残しています。
言い換えの手順
- 原文を読んで理解する:一度読んでわからなければ、前後を読み直す。わからないまま言い換えると、意味がずれます
- 原文を閉じる:見ながら書くと、どうしても語順や言い回しが似てしまいます
- 要点を自分の言葉で書く:「誰が」「何を」「どんな根拠で」述べているかを、友人に説明するつもりで書く
- 原文と照らし合わせる:意味がずれていないか、言い回しが近すぎないかを確かめる
- 出典を付ける:著者と発行年(必要ならページ)を添える
手順2がいちばんの要です。原文を閉じても書けないときは、まだ内容をつかみきれていません。
意味を変えないために
言い換えで気をつけたいのは、原文にない意味を足したり、原文の条件を落としたりしないことです。
| 原文 | 言い換えでのずれ |
|---|---|
| 「〜と考えられる」(推測) | 「〜であることが明らかになった」(断定に変わっている) |
| 「大学生を対象とした実験では〜」(条件つき) | 「人は〜」(条件が消えている) |
| 「関連が見られた」(相関) | 「〜が原因である」(因果に変わっている) |
| 「一部の研究では〜」 | 「研究では〜」(範囲が広がっている) |
こうしたずれは、意図していなくても、文献に書かれていないことを書かれているように示す捏造や、文献の内容を変えて示す改竄にあたりかねません。とくに文末の強さ、対象と条件、範囲の三つを原文と見比べましょう。
文献の言い方に合った動詞を選ぶ
文献を紹介するときの動詞も、原文がしていることに合わせます。
| 動詞 | 合う場面 |
|---|---|
| 〜と述べている | 著者の説明や考えを紹介する |
| 〜と主張している | 著者が一つの立場をとって論じている |
| 〜と指摘している | 問題点や見落としを示している |
| 〜を示した、〜を明らかにした | 実験や調査のデータで確かめている |
| 〜と報告している | 調査や実験の結果を伝えている |
| 〜と推測している、〜の可能性を論じている | 著者自身が確かではないとしている |
考えを述べただけの文献に「〜を明らかにした」と書くと、文献が示していない確かさを与えることになります。
言い換えなくてよいもの
- 専門用語:「干渉」「逆向抑制」などの用語は、そのまま使います。無理に言い換えると、かえって意味がずれます
- 固有名詞・数値:人名、理論の名前、数値は、正確にそのまま書きます
言い換えるのは、用語をつないでいる説明の部分です。
要約との違い
- 言い換え:一つの文や段落の内容を、ほぼ同じ分量で自分の言葉にする
- 要約:長い部分(章や論文全体)の要点だけを、短くまとめる
レポートでは、要約のほうがよく使われます。要約するときも、手順は同じです。原文を閉じ、要点だけを自分の言葉で書き、原文と照らし合わせます。読みながら要点を書き留める方法は「文献の読み方とノートの取り方」で紹介しています。