根拠と引用:引用のしかたと、参考文献の書き方
ほかの人の研究や考えを使うときは、どこから来たのかを必ず示します。間接引用を基本にする理由と直接引用を使う場面、書かれていないことを引用しない注意、本文中での示し方、参考文献の一覧の作り方です。
学術的な文章では、ほかの人の研究や考えを使ったら、出典を示すのが決まりです。出典を示すことは、読み手が元の資料を確かめられるようにするためでもあり、自分の考えとほかの人の考えを区別するためでもあります。
(この記事の例に出てくる文献は、説明のための架空のものです。)
引用の基本は、自分の言葉でまとめること
引用には、元の内容を自分の言葉でまとめる間接引用と、元の文章をそのまま写す直接引用があります。レポートでは、間接引用が基本です。
間接引用(要約・言い換え)
元の内容を理解したうえで、自分の言葉でまとめます。かぎかっこは付けませんが、出典は必ず添えます。
山田(2020)によれば、人が何かを思い出せないとき、その記憶が消えてしまったとは限らない。記憶は残っていても、それを引き出すきっかけがうまく働いていないことが多いと考えられるという。
間接引用が基本なのは、自分の言葉でまとめることで、書き手が文献を理解していることを示せるからです。レポートは、試験の「該当する部分を抜き出しなさい」とは違います。文献の主張を正しくつかみ、自分の論証の中に位置づけて書くことが求められています。
まとめるときは、元の意味を変えないように気をつけてください。言い換えの手順と注意は「言い換え(パラフレーズ)」で紹介しています。文末や語順を少し入れ替えただけの文は、言い換えではなく、出典の文章をほぼそのまま使ったものとして扱われます。出典を付けていても、剽窃とみなされることがあります。
直接引用は、原文そのものが必要なときだけ
元の文章を、そのまま書き写します。かぎかっこ(「」)でくくり、出典を添えます。
山田(2020)は、忘却の多くが「その情報を取り出すための手がかりが適切に働かないことによって生じると考えられる」(p. 58)と述べている。
直接引用を使うのは、原文の言い回しそのものを示す必要があるときに限ります。
- 定義や用語を、そのままの形で示したいとき
- 著者の言い回しそのものを検討したり、批判したりするとき
- 言い換えると意味が変わってしまうとき
使うときは、一字一句変えずに写し、必要な部分だけを短く引きます(途中を省くときや語句を補うときの示し方は「人文系の引用」)。直接引用ばかりが並ぶ文章は、資料を切り貼りしただけに見え、書き手が何を理解し、何を考えたのかが伝わりません。
書かれていないことを、出典に言わせない
引用でいちばん気をつけたいのは、元の文献に書かれていない内容を、その文献が言っているかのように書かないことです。
- 文献が「関連があった」としか述べていないのに、「〜が原因であると示した」と書く
- 条件つきの結果(「大学生を対象とした実験では」)を、条件を外して一般化する
- 読んでいない文献を、ほかの文献の紹介だけを頼りに引用する(孫引き。紹介のされ方が、元の内容とずれていることがある。どうしても元の文献が手に入らないときの書き方は「引用の書式」)
- 覚えている内容やうろ覚えの数字を、確かめずに出典を付けて書く
意図していなくても、文献に書かれていない内容を書かれているように示せば捏造、文献の内容を変えて示せば改竄にあたります。引用するときは、必ず元の文献のその箇所を確かめましょう。不正とされる行為については「レポートの不正」にまとめてあります。
本文中での出典の示し方
本文中では、著者の名前と発行年で出典を示す形式が、心理学などの多くの分野で使われています。
- 著者を文の主語にする:山田(2020)は〜と述べている。
- 文の終わりに添える:〜であることが示されている(山田, 2020)。
- 著者が二人:山田・佐藤(2021)、(Smith & Jones, 2021)
- 著者が三人以上:山田ほか(2022)、(Smith et al., 2022)
番号で出典を示す形式(〜である [1]。)を使う分野もあります。どちらを使うかは、授業や学科の指定に従います。直接引用のページの示し方や、複数の文献を挙げるときの書き方は「引用の書式」で紹介しています。
参考文献の一覧を作る
本文で引用した文献は、レポートの最後に参考文献として一覧にします(心理学など、本文で引用した文献だけを載せる一覧を「引用文献」と呼ぶ分野もあります。授業の指定に合わせてください)。一覧には、読み手が文献を探し出せるだけの情報を入れます。
| 文献の種類 | 入れる情報 |
|---|---|
| 本 | 著者、発行年、書名、出版社 |
| 雑誌の論文 | 著者、発行年、論文の題名、雑誌名、巻・号、ページ、DOI(あれば) |
| ウェブページ | 作成者(組織名)、公開・更新の年月日、ページの題名、URL、閲覧日 |
記号の使い方(ピリオドかコンマか、書名をイタリックにするかなど)は、形式ごとに細かく決まっています。APA など指定の形式があれば、その手引きに合わせてください。大切なのは、一つのレポートの中で書き方をそろえることです。APA の書式と日本語の文献の書き方の例は「引用の書式」にまとめてあります。
本文で引用した文献は、すべて一覧に載せます。逆に、一覧に載せた文献は、本文のどこかで引用していなければなりません。
根拠にする資料を選ぶ
根拠には、誰が・いつ・何を根拠に書いたのかがわかる資料を使います。大切な根拠は、紹介記事や教科書の説明だけで済ませず、元の研究(一次資料)で確かめましょう。ウェブの情報、研究を紹介する報道、AI の答えの扱い方は「一次資料と二次資料」に、資料の探し方は「文献の探し方」にまとめてあります。
剽窃にならないために
ほかの人の文章や考えを、出典を示さずに使うことは剽窃(ひょうせつ)にあたります。意図していなくても、出典を書き忘れれば剽窃と判断されることがあります。剽窃・捏造・改竄については「レポートの不正」でくわしく紹介しています。出典を示すことが、著作権とは別の、学術の作法の問題である理由は「引用の作法と著作権」を見てください。
- 資料を読むときに、どの文献のどこから得た情報かをメモしておく(「文献の読み方とノートの取り方」)
- 文末を少し変えただけの「言い換え」にせず、内容を理解して自分の言葉で書く(原文が必要なら直接引用にする)
- 自分の考えと、文献の考えを、文の上で区別する(「山田(2020)は〜と述べている。しかし、〜をふまえると、〜と考えられる」のように、他人の主張には著者名と出典を付け、自分の主張は根拠とともに示す)。自分の考えだと思っていることが、実はどこかで読んだ誰かの主張ではないかも確かめる(「「私」の視点と、私がいなくても成り立つ議論」)
AI につくらせた文章も、自分の考えではありません。AI の出力には、既存の文章とほぼ同じ文(剽窃)や、実在しない文献、文献の内容を取り違えた要約(捏造・改竄)が紛れ込むことがあります。AI を使ったかどうかにかかわらず、提出した文章に剽窃・捏造・改竄があれば、学術的な評価には値せず、単位も認められません。AI の使い方については「AI を使った執筆の進め方」も読んでみてください。