引用の書式の比較:APA・日本心理学会・SIST・Chicago・MLA・番号の方式

引用の書式には、分野ごとにいくつもの種類があります。APA、日本心理学会の手びき、SIST02、Chicago、MLA、Vancouver・IEEE の、使われる分野、本文中での示し方、参考文献の一覧の並べ方の違いを比べ、同じ論文をそれぞれの書式で書いた例を並べます。

引用の書式は、分野や学会、雑誌ごとに決まっています。どれも、読み手が元の文献にたどり着けるようにするという目的は同じですが、記号や順番が違います。ここでは主な書式を比べます。

授業で書式が指定されていれば、それに従います。指定がなければ、その分野でよく使われる書式を一つ選び、一つの文書の中ではそろえます。心理学でよく使う書式のくわしい書き方は「引用の書式」を見てください。

書式の決まりは、版が改まるたびに少しずつ変わります。ここに挙げたのは要点です。実際に使うときは、その書式の最新の手引きで確かめてください。

主な書式

書式主に使われる分野本文中での示し方参考文献の一覧の並べ方
APA(アメリカ心理学会、第7版)心理学、教育学、社会科学著者と発行年:(Jenkins & Dallenbach, 1924)第一著者の姓のアルファベット順
日本心理学会『執筆・投稿の手びき』(2022年版)日本の心理学著者と発行年:(山田,2020)日本語の文献も含めて、第一著者の姓のアルファベット順
SIST02(科学技術情報流通技術基準。2007年版が最後)日本の理工系、大学の紀要など番号、または著者と発行年番号なら本文に出てきた順
Chicago(シカゴ・マニュアル、第18版)歴史学など人文系(注の方式)、社会科学(著者と発行年の方式)注の番号、または著者と発行年著者の姓のアルファベット順
MLA(現代語学文学協会、第9版)文学、語学著者とページ:(Jenkins and Dallenbach 607)著者の姓のアルファベット順
Vancouver・IEEE医学(Vancouver)、工学・情報(IEEE)番号:[1]本文に出てきた順

大きく分けると、三つの方式があります。

  • 著者と発行年の方式(APA、日本心理学会、Chicago の一つ、SIST02 の一つ):いつの研究かが本文で見えるので、研究の新しさや流れが大切な分野で使われます
  • 番号の方式(Vancouver、IEEE、SIST02 の一つ):本文が短くすむので、引用の多い分野で使われます
  • 注の方式(Chicago の一つ):注に出典と説明を書けるので、史料や作品を細かく示す人文系で使われます(「人文系の引用」)

MLA は、発行年ではなくページを本文に添えるのが特徴です。文学では、作品や本文のどの箇所かが大切になるためです。

同じ論文を、それぞれの書式で書く

ここでは、実在する論文を例にします。睡眠中の忘却を調べた古典的な研究です。

  • 著者:John G. Jenkins、Karl M. Dallenbach
  • 題名:Obliviscence during Sleep and Waking
  • 雑誌:The American Journal of Psychology、35巻4号、605–612ページ、1924年
  • DOI:10.2307/1414040

APA(第7版)

Jenkins, J. G., & Dallenbach, K. M. (1924). Obliviscence during sleep and waking. The American Journal of Psychology, 35(4), 605–612. https://doi.org/10.2307/1414040

本文中:(Jenkins & Dallenbach, 1924)、Jenkins and Dallenbach (1924) は〜

日本心理学会『執筆・投稿の手びき』

Jenkins, J. G., & Dallenbach, K. M. (1924). Obliviscence during sleep and waking. The American Journal of Psychology, 35, 605–612. https://doi.org/10.2307/1414040

英語の文献は、APA とほぼ同じ形で書きます。雑誌名は略さずに正式な名前で書き、DOI は https://doi.org/ で始まる形で書きます。号数は、巻を通してページが振られている雑誌なら書かなくてもかまいません(書いてもかまいません)。この例では号数を省いています。

日本語の文献は、たとえば次のように書きます(架空の文献です)。

山田 太郎・佐藤 花子(2021).睡眠と記憶の保持 記憶研究,12, 40–52.

著者の姓と名のあいだは半角の空白をあけ、著者どうしは「・」でつなぎます。題名のあとにはピリオドを打たずに空白をあけて、雑誌名を続けます。雑誌名は斜体にせず、巻の数字だけを斜体にします。

SIST02

  1. Jenkins, John G.; Dallenbach, Karl M. Obliviscence during sleep and waking. The American Journal of Psychology. 1924, vol. 35, no. 4, p. 605-612.

本文中:〜が報告されている1)。

SIST02 では、著者の名をなるべく略さずに書き、英語の著者名どうしはセミコロンで区切ります。発行年は、雑誌名と巻のあいだに置きます。

SIST は科学技術振興機構(JST)が定めた基準ですが、その事業は2012年3月に終わり、SIST02 も2007年の版から改められていません。それでも、理系の書き方の例として、大学図書館の手引きなどでいまも紹介されています。

Chicago(注の方式)

注:

  1. John G. Jenkins and Karl M. Dallenbach, "Obliviscence During Sleep and Waking," American Journal of Psychology 35, no. 4 (1924): 607, https://doi.org/10.2307/1414040.

参考文献の一覧:

Jenkins, John G., and Karl M. Dallenbach. "Obliviscence During Sleep and Waking." American Journal of Psychology 35, no. 4 (1924): 605–12. https://doi.org/10.2307/1414040.

注には、引用した箇所のページを書きます。雑誌名の最初の The は、ふつう省きます。題名は主な語の頭を大文字にします。第18版(2024年)からは、During のような5文字以上の前置詞も頭を大文字にします(MLA では小文字のままです)。

MLA(第9版)

Jenkins, John G., and Karl M. Dallenbach. "Obliviscence during Sleep and Waking." The American Journal of Psychology, vol. 35, no. 4, 1924, pp. 605–12.

本文中:(Jenkins and Dallenbach 607)

Vancouver

  1. Jenkins JG, Dallenbach KM. Obliviscence during sleep and waking. Am J Psychol. 1924;35(4):605-12.

IEEE

[1] J. G. Jenkins and K. M. Dallenbach, "Obliviscence during sleep and waking," Am. J. Psychol., vol. 35, no. 4, pp. 605–612, Oct. 1924.

見比べると、違いがわかる

違う所例
著者名姓と名の頭文字(APA、日本心理学会、Vancouver)、名まで書く(Chicago、MLA、SIST02)、名の頭文字を先に書く(IEEE)
著者をつなぐ記号&(APA、日本心理学会)、and(Chicago、MLA、IEEE)、カンマだけ(Vancouver)、セミコロン(SIST02)
発行年の位置著者のすぐあと(APA、日本心理学会)、雑誌名と巻のあいだ(SIST02、Vancouver)、巻号のあと(Chicago、MLA)、ページのあと(IEEE)
題名の大文字最初の語と固有名詞だけ(APA、Vancouver、IEEE)、主な語の頭を大文字(Chicago、MLA)
題名の囲み方囲まない(APA、SIST02、Vancouver)、引用符で囲む(Chicago、MLA、IEEE)
雑誌名略さない(APA、日本心理学会、Chicago、MLA)、決まった略し方で略す(Vancouver、IEEE)
斜体雑誌名と巻(APA、日本心理学会の英語の文献)、雑誌名(Chicago、MLA、IEEE)、使わない(Vancouver)

どの書式でも、著者・発行年・題名・掲載された場所(雑誌名と巻号、または出版社)・ページが、必ず入っています。順番と記号が違うだけです。

著者が多いとき

本文中で、著者が多い文献をどう示すかも、書式によって違います。

  • APA(第7版):著者が3人以上なら、最初から「第一著者 et al.」とする
  • 日本心理学会:APA と同じく、著者が3人以上なら最初から「第一著者 et al.」とする。日本語の文献は「第一著者他」とする(山田他,2020)
  • Chicago(第18版):著者が3人以上なら、注や本文中では「第一著者 et al.」とする
  • MLA:著者が3人以上なら「第一著者 et al.」とする
  • 番号の方式:本文には番号だけを書くので、著者の数は関係ない

参考文献の一覧で何人まで著者を書くかも、書式ごとに決まっています。使う書式の手引きで確かめてください。

書式を選ぶ・そろえる

  • 授業や学科の指定があれば、それに従う
  • 指定がなければ、その分野の学会誌がよく使う書式に合わせる。心理学なら APA か日本心理学会の手びき
  • 一つの文書の中では、一つの書式にそろえる。書式を混ぜない
  • 文献管理ソフトを使うと、書式を切り替えて一覧を作れる。ただし、出力された結果は必ず確かめる(「文献の管理」)
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