人文系の引用:注の方式・長い引用・作品と史料

文学・歴史・哲学などの人文系の分野では、注(脚注・文末注)で出典を示す書式や、作品や史料の本文を長く引用する場面がよくあります。注の付け方、長い引用の示し方、中略や補足の書き方、翻訳書・全集・古典の示し方を紹介します。

文学・歴史・哲学などの人文系の分野では、心理学などで使われる「著者と発行年」の形式ではなく、注で出典を示す書式がよく使われます。また、作品や史料の本文そのものを読み解くことが中心になるため、長い引用や、引用の中での省略・補足の示し方も大切になります。

書式の細部は、分野・学会・授業によって違います。指定があれば、必ずそれに従ってください。ここで示すのは一般的な例です。先行研究は間接引用を基本にし、作品や史料は本文を直接引いて読み解く、という使い分けになります。文献に書かれていないことを、書かれているように引用しない注意は、人文系でも同じです(「根拠と引用」)。

(この記事の例に出てくる著者と書名は、説明のための架空のものです。)

注の方式

本文の出典を示したい箇所に番号を付け、ページの下(脚注)や、章や本文の終わり(文末注)に、番号ごとに出典を書きます。

佐々木は、この作品の主人公の沈黙を、言葉にできない後悔の表れとして読んでいる¹。

¹ 佐々木一郎『近代小説の沈黙』架空出版、2018年、45頁。

注に書くことの一例

文献の種類書き方の一例
本著者『書名』出版社、発行年、ページ。
論文著者「論文の題名」『雑誌名』巻号、発行年、ページ。
本の中の章章の著者「章の題名」、編者編『書名』出版社、発行年、ページ。
翻訳書原著者『書名』訳者訳、出版社、発行年、ページ(必要なら原著の情報も)。

日本語の文献では、書名を『』、論文や章の題名を「」でくくるのが一般的です。

同じ文献を二度目に挙げるとき

二度目からは、短く示す書式があります。

  • 著者名と書名だけを挙げる:佐々木『近代小説の沈黙』、52頁。
  • 「前掲書」「前掲論文」を使う:佐々木、前掲書、52頁。
  • 直前の注と同じ文献なら「同上」:同上、53頁。

どれを使うかは、書式によって違います。一つのレポートの中でそろえます。

注と参考文献の一覧

注の方式でも、レポートの最後に参考文献の一覧を付けるよう求められることがあります。指定を確かめてください。

長い引用

作品や史料の本文を何行にもわたって引用するときは、かぎかっこでくくる代わりに、本文から切り離して示すのが一般的です。

  • 引用の前後を1行あける
  • 引用の部分全体を、2字ほど下げる
  • かぎかっこは付けない
  • 引用のすぐあとに、出典(注の番号や、作品のページ)を示す

長い引用も、引用であることに変わりはありません。引用したら、その部分を自分がどう読むのかを、必ず本文で論じます。引用を並べるだけでは、論証になりません。

引用の中の省略・補足・強調

したいこと書き方の一例
途中を省く「〜であった。(中略)彼はそれ以来、〜」(「(中略)」の代わりに「……」を使う書式もある)
語句を補う「彼〔主人公の兄〕は〜」のように、亀甲かっこ〔 〕で補う
強調を加える傍点や太字を付け、「(傍点引用者)」と断る
原文の誤りをそのまま示す誤りのあとに「(ママ)」を添える

省略や補足で、原文の意味を変えてはいけません。都合のよい部分だけを切り取って、原文とは違う意味に見せることは、改竄にあたります(「レポートの不正」)。

旧字体や歴史的仮名遣い、句読点も、原則として原文のとおりに写します。読みやすさのために変えた場合は、その方針を注で断ります。

作品・史料・古典を引用するとき

  • どの版(テキスト)を使ったかを示す:同じ作品でも、版によって本文やページが違います。使った版(底本)を、注や参考文献に示します
  • 全集や文庫から引用するとき:全集名・巻・ページ、または文庫の書名・ページを示します
  • 古典や聖典など:ページの代わりに、巻・章・節など、どの版でも共通する区切りで示すことがあります
  • 翻訳で読んだとき:翻訳書を出典にし、訳者を示します。原文と照らした場合は、そのことも書きます

作品の読みと、批評

作品を論じるレポートでは、書き手の読みが中心になります。それでも、その読みは、本文のどこに根拠があるかを引用で示して支えます。文学研究の論文では、作品についての主張を、本文や資料、先行研究にもとづいて、私的な読みに頼らずに成り立つ形で示します(「「私」の視点と、私がいなくても成り立つ議論」)。

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