文体と表記:学術的な文章に整える

内容がよくても、話し言葉や表記のばらつきがあると読み手の信頼は下がります。である調への統一、話し言葉の言い換え、一文の長さ、表記の統一、推敲の手順です。

最後の仕上げは、文体と表記を整えることです。読み手は内容と同時に文章の手ざわりも見ています。小さなばらつきが積み重なると、「雑に書かれている」という印象を与えてしまいます。

「である調」で統一する

レポートや論文は、ふつうである調(常体)で書きます。「です・ます調」(敬体)と混ぜないようにしましょう。

  • です・ます調:本レポートでは、忘却の原因を検討します。
  • である調:本レポートでは、忘却の原因を検討する。

授業によっては、です・ます調を指定されることもあります。どちらでも、一つの文章の中では統一します。

話し言葉を書き言葉に

話すときには自然でも、学術的な文章には合わない言葉があります。

話し言葉書き言葉
なので(文頭)そのため、したがって
でも(文頭)しかし、だが
すごく、とても具体的な程度を示す(数値や比較で)。「非常に」「きわめて」も多用しない
〜みたいな〜のような
いろんなさまざまな
〜とか〜や、〜など
ちゃんと適切に、正確に
〜じゃない〜ではない
やっぱりやはり
だから(文頭)したがって、そのため
〜けど〜が、しかし
ちょっとやや、少し
全然〜ないまったく〜ない
一番最も
どんどん次々に、急速に
〜しちゃう〜してしまう
〜なんて〜など、〜とは
〜っていう〜という
〜を見ていく、〜を考察していく(予告)〜を検討する。序論では、予告より先に問いを示す
深掘りする詳しく検討する

「〜していく」「深掘り」は、動画やプレゼンでよく聞く言い方です。話すときには自然でも、レポートには合いません。ネットや動画から入り込みやすい言葉は「日常と意味が違う言葉」にまとめてあります。文と文をつなぐ言葉の言い換えは「接続の言葉」にまとめてあります。

「思う」を減らす

「〜と思う」をくり返すと、根拠のない感想のように読めます。

  • 根拠があるなら:〜と考えられる、〜と言える
  • 文献にもとづくなら:〜と指摘されている(山田, 2020。説明のための架空の文献)
  • 自分の推測なら、その理由を添える:〜の結果から、〜である可能性がある

事実・推論・意見の書き分けは「事実と意見を区別する」でくわしく紹介しています。

書き手を主語にしない

論文型の文章では、書き手を主語にしないのが原則です。主張が「私」がいなくても成り立つ形で示されていれば、文の上でも「私」を書く必要はありません。「筆者は〜と考える」も、「私」を言い換えただけで、主張を書き手個人の考えとして示すことになります。

  • 文書を主語にする:本レポートでは、〜を検討する
  • 主語を立てずに書く:以上から、〜と考えられる
  • 他人の主張には、著者名と出典を付ける。そうすれば、主語のない主張は、書き手の主張として読まれる

書き手自身の行為を書く必要があるとき(実験者を務めた、AI の利用を書き添える、謝辞など)や、エッセイや批評では、「私」や「筆者」を使います。また、分野によっては、論文でも「筆者は」「私は」を使う慣習があります(哲学・文学・歴史など)。英語の論文では、APA の書式のように、I や we を使うことを勧める書式もあります。授業や分野の書き方の指定があれば、それに従ってください。使うときは、「私」と「筆者」のどちらにするかを、一つの文書の中でそろえます。「私は〜と思う」をくり返さないことは、前の節のとおりです。

「私」を「筆者」と言い換えたり、主語を省いたりするだけでは、文章は学術的になりません。大切なのは、主張そのものを、私的な記述ではなく一般化できる形で示すことです(「「私」の視点と、私がいなくても成り立つ議論」)。

言葉で強めたり飾ったりするより、根拠で説得することについては「レトリックとの向き合い方」を見てください。

一文を短く、一つの内容に

一文が長くなると、主語と述語の対応が崩れやすくなります。目安として、一文はおよそ60〜80字に収め、一つの文には一つの内容だけを書きましょう。

  • 長い文:本研究では、干渉の影響を調べるために、大学生を対象として、二つの単語リストを順に覚えてもらい、その後に最初のリストを思い出してもらう実験を行ったところ、二つ目のリストが長いほど成績が下がった。
  • 分けた文:本研究では、大学生を対象に干渉の影響を調べた。参加者には二つの単語リストを順に覚えてもらい、その後に最初のリストを思い出してもらった。その結果、二つ目のリストが長いほど成績が下がった。

「〜が、〜が」と「が」が続く文や、「〜し、〜し」と並べ続ける文は、分けどころです。

表記をそろえる

同じ言葉の書き方がばらばらだと、読み手は引っかかります。字下げや全角・半角など、紙面の整え方は「日本語の組版」で紹介しています。

  • 漢字とかな:「事」と「こと」、「出来る」と「できる」、「様々」と「さまざま」などを、どちらかにそろえる(一般に、形式的な言葉はかなで書くと読みやすくなります)
  • 数字:算用数字(1, 2, 3)と漢数字(一、二、三)の使い分けを決める
  • 英数字:全角と半角を混ぜない
  • 句読点:「、。」と「,.」のどちらかに統一する(指定があればそれに従う)
  • 用語:一度決めた専門用語は、言い換えずに同じ言葉を使う(「言葉の定義」)

推敲の手順

書き終えたら、次の順で見直すと効率よく整えられます。確かめることを一覧にした「推敲の確認リスト」も使ってください。

  1. 時間をおく:書いた直後は自分の文章の粗が見えません。できれば一晩おきます
  2. 全体から細部へ:まず課題への応答と全体の構成を、次に段落と論証を、最後に文と表記を見る
  3. 声に出して読む:つかえる所は、文が長いか、つながりがおかしい所です
  4. 機械の手も借りる:誤字や表記のゆれは、ワープロやエディタの校正の機能でまとめて見つけられます。ただし、機械が知らせるのは誤りの一部です。文の長さや言い回しは、自分の目で確かめます
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