数学的証明の書き方:仮定から結論まで、すき間なく
数学の証明は、仮定と定義から、結論を一歩ずつ論理でつないで導く文章です。示すことをはっきりさせる、記号を定義する、論理のつなぎの言葉を使う、場合分け・背理法・数学的帰納法の書き方、数式の書き方とよくある誤りを紹介します。
数学の証明は、仮定と定義から出発して、結論を、例外なく成り立つ論理の一歩ずつでつないで導く文章です。経験科学の研究では結果が仮説を「支持」するにとどまるのに対して、証明は結論が必ず成り立つことを示します(「演繹と帰納」「日常と意味が違う言葉」)。
書き始める前に、示すことをはっきりさせる
- 仮定:何を前提にしてよいのか
- 結論:何を示すのか
- 使ってよいもの:定義、すでに示された定理、授業で扱った結果
命題: が奇数ならば、 は奇数である。
仮定: は奇数。示すこと: は奇数。
示すことを書き出しておくと、途中で、示すべきことを仮定のように使ってしまう誤りを防げます。
証明の書き方
証明 は奇数なので、ある整数 を用いて と書ける。このとき、
である。 は整数なので、 は奇数である。 □
- 新しい記号は、出てくるたびに定義する:「ある整数 を用いて」のように、何を表すかを書く
- 一歩ずつ、理由を添える:「〜なので」「定理1より」と、その式が成り立つ理由を示す
- 終わりを示す:□ や「(証明終わり)」など、授業で使われている記号で、証明の終わりを示す
論理のつなぎの言葉
| 言葉 | 使い方 |
|---|---|
| 〜なので、〜だから | 前の内容が、次の内容の理由であることを示す |
| よって、したがって、ゆえに | 前の内容から、結論を導く |
| 〜とする、〜とおく | 記号を導入する、仮定を置く |
| 任意の〜について | すべての〜について成り立つことを示す |
| ある〜が存在して | 少なくとも一つ、条件を満たすものがあることを示す |
| 一般性を失わずに | 場合を一つに絞っても、ほかの場合も同じように示せることを断る |
「明らかに」は、本当に一歩で確かめられるときだけ使います。説明を省くために使うと、すき間のある証明になります。
よく使う証明の型
場合分け
すべての場合を、もれなく、重なりなく分けて、それぞれで示します。「場合1: が偶数のとき」「場合2: が奇数のとき」のように、場合を明記します。
背理法
結論が成り立たないと仮定して、矛盾を導き、結論が成り立つことを示します。「〜でないと仮定する」で始め、「これは〜に矛盾する。よって〜である」で締めくくります。
数学的帰納法
自然数についての命題を示すときに使います。
- のときに成り立つことを示す
- のときに成り立つと仮定して、 のときにも成り立つことを示す
2 の「仮定する」部分(帰納法の仮定)を、どこで使ったかを明記します。
よくある誤り
| 誤り | 何が問題か |
|---|---|
| いくつかの数で確かめて、成り立つとする | 例での確認は、証明にならない(事例から一般化する帰納であって、演繹ではない。なお、数学的帰納法は、名前に反して演繹的な証明の方法) |
| 示すべき結論を、途中で使う | 循環になり、何も示していない(「誤謬」の論点先取) |
| 記号を定義せずに使う | 読み手が、記号の意味を決められない |
| 「明らか」で、大事な一歩を飛ばす | すき間のある証明になる |
| 逆を示して、もとの命題を示したとする | 「A ならば B」の逆「B ならば A」は、別の命題 |
対偶(「B でないならば A でない」)は、もとの命題と同じ真偽を持つので、対偶を示してもとの命題を示すことはできます。逆と取り違えないようにしましょう。
数式の書き方
- 数式も文の一部:数式のあとにも、文の流れに合わせて句読点を打つ
- 変数は斜体、数字と決まった名前の関数は立体:文字で置いた変数や関数(, )は斜体、 や のような決まった名前の関数は立体にする。TeX では
\sin\logと書くと立体になる - 大事な式には番号を付ける:あとで「式 (1) より」と参照できるようにする
- TeX を使う:数式の多いレポートは、TeX(LaTeX)で書くと整えやすくなります。文中の数式は
$...$、別の行に出す数式は\[...\]や、番号を付けられるequation・alignの環境で書きます(このガイドやエディタでは$$...$$も使えますが、LaTeX の文書ではふつう使いません)(「提出するファイルの形式」)
このサービスのエディタでは、$...$ で数式を書けます。Word に書き出すと、数式は Word の数式として書き出されます(変換できない一部の式は、TeX の文字列のまま残ることがあります)。
確かめること
- 仮定と、示すことを、はじめに書いた
- 使う記号を、すべて定義した
- 一歩ごとに、成り立つ理由を示した
- 場合分けに、もれと重なりがない
- 示すべき結論を、途中で使っていない
- 証明の終わりを示した