実験レポートの書き方:実験を報告し、考察する
心理学の実験演習などで書く実験レポートは、決まった型(IMRaD)で、行った実験とその結果を報告し、考察する文章です。全体の流れと、書く前の準備、共同で実験したときの注意、提出前に確かめることをまとめました。
実験レポートは、自分(たち)で行った実験について、何を確かめるために、何をして、何がわかり、それが何を意味するのかを報告する文章です。論証型のレポートと違って、根拠の中心は文献ではなく自分で得たデータです。
授業で書式の手引きが配られていたら、それがいちばん優先です。このガイドは、手引きに書かれていないところを補うつもりで読んでください。
全体の流れ
実験レポートは、ふつうIMRaDの型で書きます。
| 部分 | 書くこと | くわしく |
|---|---|---|
| 題名 | 何を調べたかがわかる具体的な題 | — |
| 序論(目的) | 主題、背景(先行研究)、問題、問い・目的・仮説、道筋 | IMRaD、仮説の立て方 |
| 方法 | 参加者、材料、手続き、分析 | 方法の書き方 |
| 結果 | データ、図表、統計の結果 | 結果の書き方、図と表の作り方 |
| 考察 | 仮説との照らし合わせ、解釈、限界 | 考察の書き方 |
| 引用文献 | 本文で引用した文献の一覧 | 根拠と引用 |
| 付録 | 使った刺激や質問紙など(求められたとき) | — |
授業によっては、序論を「目的」、考察を「考察」と「結論」に分けるなど、見出しが少し違うことがあります。指定があれば、それに従います。
書く前に:実験の記録を残す
実験レポートの方法と結果は、実験のときの記録がなければ書けません。実験の最中や直後に、次のことを書き留めておきましょう。
- 日時、場所、参加者の人数と属性
- 実際に行った手続き(予定と違ったことがあれば、それも)
- 使った刺激や装置、教示の文
- 参加者の様子や、気づいたこと
- 除いたデータがあれば、その理由
データは、手を加える前のものをそのまま保存しておきます。分析のために整えたデータとは別に残しておくと、あとで確かめ直せます。
共同で実験しても、レポートは一人で書く
実験演習では、グループで実験をして、データを共有することがよくあります。データや手続きは共有しても、レポートの文章は一人一人が自分で書くのが原則です。
- ほかの人のレポートの文章を写さない、写させない
- 考察は、自分で考えて書く(グループで話し合った内容を使うなら、授業の決まりに従う)
- 分担して書いた文章を、一人のものとして出さない
写し合いは、レポートの不正にあたります。参加者への説明や同意、データの扱いについては「人からデータを集めるときの倫理」を見てください。どこまで共有してよいかは、授業によって違うので、先生の指示を確かめてください。
結果を変えない
予測どおりの結果が出なくても、データや仮説を書き換えてはいけません。
- 予測に合わないデータを、理由なく除かない
- 結果を見てから、仮説を書き換えない(「仮説の立て方」)
- 予測と違う結果は、そのまま報告し、なぜそうなったかを考察で論じる
授業の実験レポートで評価されるのは、仮説が当たったかどうかではなく、実験を正しく報告し、結果を筋道立てて考察できているかです。
文体
- 方法と結果は、すでに行ったことなので、過去形で書く(「〜した」「〜であった」)
- 「私たちは」を主語にせず、「参加者は〜した」「〜を測定した」のように、参加者や行ったことを中心にして書く(授業の指定があればそれに従う)
- 数値・単位・統計の記号は、指定の書式でそろえる(「結果の書き方」)
提出前に確かめること
- 序論で、問い・目的・仮説がはっきり書かれている
- 方法を読めば、ほかの人が同じ実験をくり返せる
- 結果に、解釈や感想が混ざっていない
- すべての図表に番号と題があり、本文で触れている
- 考察が、目的と仮説に答えている
- 結果を見てから、仮説を書き換えていない
- 除いたデータがあれば、その数と理由を書いている
- 本文で引用した文献が、引用文献の一覧に載っている
この記事の細目
- IMRaD:序論・方法・結果・考察の型
実験レポートや研究論文で使われる、序論(Introduction)・方法(Methods)・結果(Results)・考察(Discussion)の型です。それぞれに書くことと、よくある混ざり方、書く順番を紹介します。
- 仮説の立て方:確かめられる予測にする
仮説は、実験で確かめる「予測」です。答え(結論)とは違います。理論から仮説を導く流れ、確かめられる仮説の条件、言葉を測れる形にする操作的定義、結果を見てから仮説を変えてはいけない理由を紹介します。
- 方法の書き方:ほかの人が同じことをできるように
実験レポートや研究論文の「方法」は、読んだ人が同じ実験や調査をくり返せるように書く部分です。参加者・材料・手続き・計画・分析の書き方と、くわしさの目安、よくある抜けを、例とともに紹介します。
- 結果の書き方:データが示した事実を報告する
結果の節には、データが示した事実だけを書きます。書く順番、記述統計と検定の結果の書き方(APA の書式の例)、「有意差がない」の正しい読み方、図表への触れ方、解釈を混ぜないための見分け方を紹介します。
- 考察の書き方:結果の意味を論じる
考察は、結果をくり返す場所ではなく、結果が目的と仮説に照らして何を意味するのかを論じる場所です。考察の組み立て、仮説が支持されなかったときの書き方、限界と今後の課題の書き方、よくある失敗と直し方を紹介します。
- 図と表の作り方:データを一目で伝える
図と表は、本文で言葉にしきれないデータを、読み手に一目で伝えるためのものです。図と表の使い分け、番号と題の付け方、軸・単位・誤差の示し方、避けたい飾り、本文での触れ方、ほかの資料の図表を使うときの注意を紹介します。