言葉の定義:大切な言葉の意味を決めて使う
レポートの問いや主張に出てくる大切な言葉は、何を指すのかを決めてから使います。定義が必要な言葉の見つけ方、国語辞典ではなく専門の文献から定義する理由、レポートでの使い方を示す書き方、定義を最後まで守ることを紹介します。
レポートの問いや主張に出てくる言葉の意味があいまいなままだと、何を論じているのかが読み手に伝わりません。書き手自身も、途中で言葉の意味がずれていることに気づかないまま、論証を進めてしまいます。大切な言葉は、意味を決めてから使いましょう。
定義が必要な言葉
すべての言葉を定義する必要はありません。次のような言葉を定義します。
- 問いと主張の中心になる言葉:「忘却の主な原因は何か」なら「忘却」
- 人によって意味がずれやすい言葉:「若者」「最近」「悪影響」「学力」など
- 分野によって意味が違う言葉:同じ「記憶」でも、心理学と情報工学では指すものが違う
- 日常と学術で意味が違う言葉:「批判」「理論」「有意」など(「日常と意味が違う言葉」)
問いを立てる段階で、問いの中の言葉が何を指すのかを確かめておくと、あとで迷いません(「問いの立て方」)。
国語辞典から始めない
レポートの書き出しで「広辞苑によれば、〜とは〜である」と国語辞典の説明を引くことがあります。しかし、国語辞典が示すのは、その言葉の日常での一般的な意味です。学術的なレポートで必要なのは、その分野でその言葉がどう使われているかです。
- 専門の事典や教科書で、その分野での定義を確かめる
- 主な文献が、その言葉をどういう意味で使っているかを見る
- 研究者によって定義が違うなら、その違いも押さえる
定義を文献から示すときも、間接引用が基本です(「根拠と引用」)。定義の言い回しそのものが大切な場合は、直接引用にします。
レポートでの使い方を示す
定義が一つに決まっていない言葉や、範囲を限りたい言葉は、このレポートではどういう意味で使うのかをはっきり書きます。
本レポートでは、「忘却」を、一度覚えた情報をのちに思い出せなくなること、という意味で用いる。記憶の痕跡そのものが失われたかどうかは問わない。
この例では、意味を示したうえで、何を含め、何を含めないかも書いています。範囲を示しておくと、読み手は論証の射程を正しくつかめます。
定義は、ふつう序論か、その言葉が最初に出てくる所に書きます。
測れる形にする
実験や調査のレポートでは、言葉を何で、どう測るかまで決めます。これを操作的定義と呼びます(「仮説の立て方」)。
- 「忘却」→ 8時間後の再生テストで、思い出せなかった単語の数
- 「SNS の利用」→ 寝る前の1時間に SNS を見ていた時間(自己報告)
決めた意味を、最後まで守る
いちど定義した言葉は、レポートの最後まで、同じ意味で使います。
- 途中で、日常の意味に戻らない
- 同じものを、別の言葉で言い換えない(「忘却」と「記憶の消失」を混ぜない)
- 意味の違う使い方が必要になったら、別の言葉を使うか、その都度ことわる
途中で意味がずれると、論証が成り立たなくなります。これは「誤謬」で紹介している「言葉の意味のすり替え」にあたります。表記の面からの言葉のそろえ方は「文体と表記」を見てください。
確かめること
- 問いと主張の中心になる言葉の意味を、決めているか
- 定義を、国語辞典ではなく、その分野の文献で確かめたか
- 範囲を限っているなら、何を含め、何を含めないかを書いたか
- 決めた意味を、最後まで同じ意味で使っているか