アウトライン:書く前に全体を設計する
思いつくままに前から書き進めると、連想で文がつながり、結論が最初の問いに答えていない文章になりがちです。書く前に問いと答えの骨組みを設計し、全体の構造を意識しながら書き、書いたあとに構造を確かめる方法を紹介します。
レポートでよく見かける失敗の一つが、思いつくままに前から書き進めた文章です。
書き始めは序論の問いから出発していても、一つの文から連想した次の文、その文から連想したさらに次の文……と書き進めるうちに、話はいつの間にか別の方向へ流れていきます。最後に結論を書く段になると、書いてきた内容をまとめることはできても、最初の問いには答えていない。一文一文は自然につながっていても、文章全体としては筋の通らないレポートになってしまいます。
これを防ぐには、書き始める前に全体を設計し、構造を意識しながら書くことです。
なぜ、連想で書くと崩れるのか
文章を書いている最中は、直前の一、二文しか目に入りません。そのため、「いま書いた文から自然に続く文」を選びがちです。しかし、レポートの各部分が従うべきなのは、直前の文ではなく、問いに答えるという全体の目的です。
| 連想で書いた文章 | 設計して書いた文章 |
|---|---|
| 直前の文とのつながりで次の文が決まる | 問いに答えるために必要なことで次の段落が決まる |
| 途中で話題が移っても気づきにくい | 各段落の役割が決まっているので、ずれに気づける |
| 結論は書いた内容のまとめになる | 結論は序論の問いへの答えになる |
設計の手順
1. 問いと、仮の答えを書く
まず、レポートで答える問いを一文で書きます。続けて、調べた範囲での仮の答えも一文で書きます(「課題に答える」)。仮の答えは、設計のための目印です。序論には問いまでを書き、答えは結論で示します。仮の答えが、問いの型(なぜ・どのように・A か B か など)に合った答えの型になっているかも、ここで確かめます(「問いの立て方」)。
2. 答えを支える理由を、小さな問いとして並べる
答えを支えるために確かめるべきことを、二つか三つの小さな問いとして挙げます(「問いの立て方」)。
- 問い:忘却の主な原因は、減衰か、干渉か
- 仮の答え:干渉のほうが、忘却をよく説明する
- 小さな問い1:経過時間が同じでも、その間の活動で忘れ方は変わるか
- 小さな問い2:時間の経過だけで記憶が弱まることは、示されているか
- 小さな問い3:睡眠の効果は、干渉とは別の仕組み(睡眠中の定着)でも説明できるか
3. 小さな問いごとに、根拠を書き添える
それぞれの小さな問いに答えるために使う文献やデータを書き添えます。根拠が見つからない小さな問いは、まだ論じられない部分です。文献を探すか、設計を見直します。
4. 段落の設計図にする
小さな問いを、本論の節や段落に割り当てます。各段落には、その段落で言いたいこと(中心文)を一文で書いておきます(「パラグラフ・ライティング」)。
| 部分 | その部分で言いたいこと(予定) | 使う根拠 | 字数の目安 |
|---|---|---|---|
| 序論 | 忘却の主な原因は減衰か干渉か、という問いを導く | 教科書の説明 | 300字 |
| 本論1 | 経過時間が同じでも、その間に何をしたかで忘れ方が変わる | 睡眠の実験 | 500字 |
| 本論2 | 時間の経過だけで記憶が弱まることを示すのは難しい | 文献A | 500字 |
| 本論3 | 睡眠の効果を定着で説明する見方をふまえても、干渉の働きは残る | 文献B、文献C | 500字 |
| 結論 | 干渉のほうが忘却をよく説明する。ただし〜は残る | (本論のまとめ) | 200字 |
本論の各部分は、一つか二つの段落で書きます(一段落はおよそ200〜400字)。言いたいことだけを上から読んで、問いから答えまでの筋が通っていれば、設計はできています。字数の目安を入れておくと、一つの部分だけが長くなりすぎるのも防げます。
書いている途中で、設計に戻る
設計どおりに書けるとは限りません。書いている途中で新しいことに気づいたり、根拠が思ったより弱かったりします。大切なのは、ずれたときに気づき、設計に戻ることです。
- 段落を書き終えるたびに、「この段落は、どの小さな問いに答えているか」を確かめる
- 答えている小さな問いがない段落は、削るか、別の段落に移す
- 新しく大切な論点に気づいたら、設計図に書き加えてから書く
- 設計を変えたら、序論と結論も、変えた設計に合わせる
設計図ができたら、AI に「この流れに抜けや飛躍はないか」と点検を頼むこともできます(「AI への相談のしかた」)。
思いついた面白い話題でも、問いに答えるのに必要がなければ、レポートには入れません。メモに残しておき、別のレポートに使いましょう。
書いたあとに、構造を確かめる(逆アウトライン)
書き上げたら、設計とは逆に、書いた文章からアウトラインを取り出して確かめます。
- 各段落の最初の文(中心文)だけを、順に書き出す
- 書き出した文だけを読んで、問いから答えまでの筋が通るかを見る
- 序論の問いと、結論の答えを並べて、対になっているかを見る
筋が通らないところは、段落の順番を入れ替える、中心文を書き直す、足りない段落を足す、といった直しをします。文や表記を整えるのは、そのあとです(「推敲の確認リスト」)。
エディタの上の帯にある「アウトライン」を開くと、見出しの並びで全体の形を確かめられます。節ごとに見出しを付けておくと、書きながら設計とのずれに気づきやすくなります。