一次資料と二次資料:根拠の確かさを見分ける
同じ内容でも、元の研究そのものか、それを紹介した記事かで、根拠としての確かさは違います。一次資料と二次資料の違いと使い分け、ウェブの情報や報道、AI の答えを根拠にするときの確かめ方を紹介します。
レポートの根拠の確かさは、どんな資料にもとづいているかで決まります。同じ実験の結果でも、研究者自身が書いた論文で読むのと、それを紹介したニュース記事で読むのとでは、根拠としての重みが違います。
ことばの注意:ネットで「エビデンスは?」と言うときのエビデンスは、何かの出典というくらいの意味ですが、学術でいうエビデンスには確かさの違いがあります。「エビデンスがある」ではなく、どんな研究で何が示されたのかを書きましょう(「日常と意味が違う言葉」)。
一次資料と二次資料
| 種類 | どういう資料か | 例 |
|---|---|---|
| 一次資料 | 研究や出来事そのものを、当事者が直接記録・報告したもの | 研究者が実験の結果を報告した論文(原著論文)、政府が公表した統計、法律の条文、歴史の史料、調査の生データ |
| 二次資料 | 一次資料をもとに、別の人が整理・解説・評価したもの | 教科書、レビュー論文(総説)、新聞や雑誌の解説記事、一般向けの本 |
事典やまとめのサイトのように、二次資料をさらにまとめたものを三次資料と呼ぶこともあります。
どちらがよい、悪いではなく、役割が違います。
使い分け
調べ始めは二次資料で
教科書やレビュー論文は、その分野でわかっていることや議論の対立を、見通しよく整理しています。まずはここで全体をつかみ、どの研究が重要かを知るのが近道です(「学ぶための文献と、主張を支える文献」)。
大切な根拠は一次資料で
レポートの主張を支える大切な根拠は、できるだけ一次資料で確かめます。二次資料の紹介は、元の研究の条件や限界を省いていたり、強調の仕方が変わっていたりすることがあるからです。
- 教科書に「〜という実験がある」と書かれていたら、その実験の論文を探して読む
- 統計の数字は、報道ではなく、公表した機関の元の資料で確かめる
元を読まずに二次資料の紹介だけで引用すること(孫引き)は避けます。どうしても元の資料が手に入らないときの書き方は「引用の書式」を見てください。
ウェブの情報を見極める
ウェブには一次資料も二次資料もありますが、誰が書いたのかがわからないものも多くあります。根拠に使う前に、次のことを確かめます。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 誰が書いたか | 著者や運営する組織の名前、その分野での立場 |
| 何のために書いたか | 解説か、宣伝か、意見の表明か |
| いつのものか | 公開・更新の日付。古い情報が見直されていないか |
| 何を根拠にしているか | 出典や元のデータが示されているか |
| ほかの資料と合うか | 同じことを、別の信頼できる資料でも確かめられるか |
公的機関の統計や報告書、学術雑誌の論文は、ウェブで読めるものでも信頼できる資料です。一方、作成者のわからないまとめのサイトや、出典のない記事は、根拠にはしません。
百科事典のサイト
誰でも編集できる百科事典のサイトは、調べ始めの入り口としては便利です。ただし、書いた人や確かさが記事ごとに違うため、レポートの出典にはしません。記事の中で示されている元の資料をたどり、それを読んで引用します。
研究を紹介する報道
「〇〇大学の研究で〜がわかった」という記事は、研究の中身を短くまとめたものです。見出しが結果を強めに言っていることもあります。根拠にするなら、記事の中で示されている元の論文を探して読みましょう。レポートでは、記事の「〇〇大学の研究によると」という書き方をまねず、元の論文の著者名と発行年で示します(「引用を生かす」)。
査読前の論文
近年は、専門家の審査(査読)を受ける前の論文が、ウェブで公開されることもあります。新しい研究を知るには役立ちますが、内容がまだ確かめられていないことをふまえて扱います。
AI の答え
AI の答えは、資料ではありません。もっともらしい誤りや、実在しない文献を含むことがあります。AI が示した内容は、必ず元の資料で確かめ、引用するのはその元の資料にします(「AI の答えを確かめる手順」)。
本文の中で、資料の確かさを示す
根拠を示すときは、それがどんな資料かがわかるように書くと、読み手が確かさを判断しやすくなります。
- 「〜という実験の結果がある(高橋, 2019)」:一次資料の研究
- 「複数の研究を検討したレビューでは〜とされている(佐藤, 2022)」:二次資料のまとめ
- 「〇〇省の調査によれば〜」:公的な統計
(ここに挙げた文献は、説明のための架空のものです。)