IMRaD:序論・方法・結果・考察の型
実験レポートや研究論文で使われる、序論(Introduction)・方法(Methods)・結果(Results)・考察(Discussion)の型です。それぞれに書くことと、よくある混ざり方、書く順番を紹介します。
IMRaD(イムラッド)は、実験や調査にもとづく文章の型です。Introduction(序論)、Methods(方法)、Results(結果)、Discussion(考察)を and でつないだ頭文字で、小文字の a が and にあたります。自然科学・医学・心理学・社会科学などの研究論文の多くがこの型で書かれ、大学の実験レポートでもこの型を求められることがよくあります。
決まった型があるのは、読み手が知りたいことを、決まった場所ですぐに見つけられるようにするためです。方法だけを確かめたい人も、結果だけを見たい人も、迷わずにたどり着けます。
四つの部分に書くこと
| 部分 | 答える問い | 書くこと |
|---|---|---|
| 序論 | なぜ、何を調べたのか | 主題、背景(先行研究)、まだわかっていないこと、問い・目的・仮説、道筋 |
| 方法 | どうやって調べたのか | 参加者や材料、手続き、分析の方法 |
| 結果 | 何がわかったのか | 得られたデータ、図表、統計の結果 |
| 考察 | それは何を意味するのか | 仮説との照らし合わせ、先行研究との比較、限界、今後の課題 |
序論・本論・結論の型で言えば、方法と結果が本論にあたり、考察が結論を広げたものにあたります。
序論:広いところから狭いところへ
序論は、広い主題から始めて、この実験の問いと目的へと絞り込んでいきます(「序論の書き方」と同じ流れです)。
- 主題:何についての研究か
- 背景:これまでの研究で何がわかっているか(先行研究)
- 問題:まだわかっていないこと、食い違っていることは何か
- 問い・目的・仮説:だから、この実験で何を確かめるのか、どんな結果を予測するのか
- 道筋:どんな方法で確かめるのか(くわしくは方法で書く)
目的と仮説は、方法と考察の両方の土台になります(「仮説の立て方」)。「本実験では、〜であれば〜になると予測した」のように、はっきり書きましょう。仮説は予測であって、答え(結論)ではありません。答えは、結果を受けて考察で示します。
方法:ほかの人が同じことをできるように
方法は、読んだ人が同じ実験をくり返せるくらいくわしく書きます(くわしくは「方法の書き方」)。
- 参加者:人数、年齢や属性、集め方
- 材料・装置:使った刺激、質問紙、機器
- 手続き:何を、どの順で、どれくらいの時間行ったか
- 分析:どのデータを、どの方法で分析したか
すでに終わったことなので、文末は「〜した」「〜であった」と過去形で書きます。
結果:起きたことだけを書く
結果には、データが示した事実だけを書きます。図や表を使い、本文では図表の要点を言葉で示します。
学習後に睡眠をとった条件では、覚醒していた条件よりも再生数が多かった(図1)。
ここで「これは睡眠中に干渉が起きなかったためである」と解釈を書き始めないことが大切です。解釈は考察に書きます。統計の書き方や図表への触れ方は「結果の書き方」で紹介しています。
考察:結果の意味を論じる
考察では、結果を序論の目的と仮説に結びつけ、その意味を論じます。おおまかな流れは次のとおりです。
- 結果の要約と、仮説との照らし合わせ:結果は仮説を支持したか
- 解釈:なぜそうなったと考えられるか
- 先行研究との比較と、ほかの説明の検討:これまでの研究と比べ、別の説明が成り立たないかを考える
- 限界と今後の課題:この実験で言えないこと、次に確かめるとよいこと
- 結論:目的に対する答えを、短くまとめる
序論が「広い → 狭い」なら、考察は「狭い → 広い」です。この形は、二つの三角形を頂点で向かい合わせた形から「砂時計型」と呼ばれることもあります。
組み立ての例や、仮説が支持されなかったときの書き方は「考察の書き方」で紹介しています。
よくある混ざり方
| よくある書き方 | 直し方 |
|---|---|
| 方法の中に結果が入っている(「〜したところ、〜となった」) | 「〜となった」を結果へ移す |
| 結果の中に解釈が入っている(「〜であり、これは〜を示している」) | 「〜を示している」を考察へ移す |
| 考察で結果をくり返すだけ | 結果が何を意味するかを書く |
| 考察で新しいデータを出す | データは結果に置き、考察では参照する |
前後に付けるもの
四つの部分の前後には、次のものを付けるのがふつうです。
- 題名:何を調べたかがわかる具体的な題にする
- 要旨(アブストラクト):目的・方法・結果・考察(結論)を数行にまとめる(研究論文に付けるもので、卒業論文でも、本文とは別に求められることがあります。授業の実験レポートは分量が多くないため、指定がなければ付けません。「要旨の書き方」)
- 引用文献:本文で引用した文献の一覧。心理学など多くの分野で、この呼び方をします(書き方は「根拠と引用」)
- 付録:質問紙の全文、細かいデータなど
書く順番
研究の筋道は、序論で問いと目的を立て、そこから方法が決まり、結果と考察へ進むというものです。書くときも、この順が基本です。ただ、考察まで書き終えると、序論の背景の説明や先行研究の示し方に、直したい所が見えてきます。そこで、次の進め方をすすめます。
- 序論の下書き:問い・目的・仮説をはっきりさせる(実験の前に決まっているはずのもの)
- 方法:やったことを、くり返せるくわしさで書く
- 結果:図表を先に作り、それを言葉にする
- 考察:結果を、目的と仮説に照らして論じる
- 序論の見直し:背景や先行研究の示し方を、考察と食い違わないように整える
- 題名(と要旨):最後に全体をまとめる。要旨は求められたときだけ付ける
序論を見直すときも、結果を見てから仮説を書き換えてはいけません。結果に合わせて「はじめからそう予測していた」ように書くことは、研究の手続きをゆがめることになります。予測と違う結果が出たら、それをそのまま考察で論じましょう。
授業によっては、IMRaD とは少し違う見出し(「目的」「方法」「結果」「考察」など)を指定されることがあります。指定があれば、そちらに従ってください。