結果の書き方:データが示した事実を報告する
結果の節には、データが示した事実だけを書きます。書く順番、記述統計と検定の結果の書き方(APA の書式の例)、「有意差がない」の正しい読み方、図表への触れ方、解釈を混ぜないための見分け方を紹介します。
結果の節は、データが何を示したかを報告するところです。それが何を意味するかは書きません。意味を論じるのは考察の役目です(「考察の書き方」)。
書く順番
- 分析の対象:分析に使ったデータの数。除いたデータがあれば、その数と理由
- 記述統計:条件ごとの平均と標準偏差など(表や図で示す)
- 仮説を確かめる分析:検定などの結果
- そのほかの分析:仮説とは別に行った分析があれば、それとわかるように
除いたデータの数と理由を書くのは、とても大切です。理由を書かずにデータを除くと、結果を都合よく変えたと受け取られかねません(「レポートの不正」)。
記述統計を書く
条件ごとの平均(M)と標準偏差(SD)は、表か図にまとめ、本文では要点だけを書きます。
睡眠条件の再生数(M = 12.4, SD = 3.2)は、覚醒条件(M = 9.8, SD = 3.5)よりも多かった(図1)。
すべての数値を本文にも表にも書くと、くり返しになります。細かい数値は表に任せ、本文では読み手に注目してほしい点を示します。
検定の結果を書く
検定の結果は、何を比べ、どの検定を使い、どんな値が出たかがわかるように書きます。心理学で広く使われている APA の書式では、たとえば次のように書きます。
| 分析 | 書き方の例 |
|---|---|
| t 検定 | t(38) = 2.45, p = .019, d = 0.78 |
| 分散分析 | F(1, 38) = 6.00, p = .019, η²ₚ = .14 |
| 相関 | r(38) = .35, p = .027 |
対応のない t 検定を行ったところ、睡眠条件の再生数は覚醒条件よりも有意に多かった(t(38) = 2.45, p = .019, d = 0.78)。
書式で気をつけることは、おおむね次のとおりです。
- 統計の記号(M, SD, t, F, r, p など)は斜体にする
- 自由度は、記号のすぐあとのかっこに入れる
- p の値は、ふつう小数第2位か第3位まで正確に書き、.001 より小さいときは p < .001 と書く
- p や相関係数のように 1 を超えない値は、小数点の前の 0 を省く(.019)
- 効果量(d、偏イータ二乗 η²ₚ など)も、あわせて報告する。ギリシャ文字は斜体にしない
ただし、書式の細部は、APA の版、日本心理学会の手引き、授業の指定などによって違います。指定された書式に合わせてください。
効果量とは
効果量は、差や関係の大きさを示す値です。p の値は、差が偶然だけでは説明しにくいかどうかを示しますが、差がどれくらい大きいかは示しません。参加者が多ければ、ごく小さな差でも有意になります。そのため、効果量もあわせて報告します。
二つの平均の差の大きさを示す d では、0.2 ほどで小さい、0.5 ほどで中くらい、0.8 ほどで大きい差の目安とされることがあります(ただし、分野や研究によって目安は違います)。
「有意差がない」は「差がない」ではない
検定で有意な差が見られなかったとき、「二つの条件に差はなかった」と書くのは誤りです。
- 誤り:睡眠条件と覚醒条件の再生数に差はなかった。
- よい:睡眠条件と覚醒条件の再生数に、有意な差は見られなかった(t(38) = 1.12, p = .270)。(差が見られなかった場合の例)
有意な差が見られないのは、本当に差がない場合もあれば、参加者が少なくて差を見つけられなかった場合もあります。どちらなのかは、検定の結果だけでは決められません。考察で、その可能性を検討します。
ことばの注意:統計の「有意」は、「偶然だけでは説明しにくい」という意味で、差が大きいことや重要であることを意味しません(「日常と意味が違う言葉」)。
p が .05 をわずかに上回ったときの「有意傾向」という書き方は、分野や授業によって扱いが違います。使うかどうかは、指定に従ってください。
図表に触れる
図や表を載せたら、本文で必ず触れます。
- 「結果を図1に示す」だけでなく、「図1に示すように、睡眠条件では〜」と、何を見てほしいかを書く
- 本文で触れない図表は載せない
- 図表の番号は、本文で出てくる順に付ける
図表そのものの作り方は「図と表の作り方」で紹介しています。
結果か、考察かを見分ける
書いた文が結果に入るか、考察に入るかは、次の問いで見分けられます。
| 問い | 答えが「はい」なら |
|---|---|
| データを見れば、誰でも同じことが言えるか | 結果に書く |
| 理由や意味、ほかの研究とのつながりを述べているか | 考察に書く(「事実と意見を区別する」) |
| 自分の予測や期待についての言葉が入っているか | 考察に書く(結果からは外す) |
- 結果:睡眠条件の再生数は、覚醒条件よりも多かった。
- 考察:これは、睡眠中は新しい情報が入らず、干渉が少なかったためと考えられる。
「予想どおり」「残念ながら」「興味深いことに」といった言葉も、結果の節には入れません。
文体
- 過去形で書く(「〜であった」「〜が見られた」)
- 数値・記号・単位は半角でそろえる
- 小数点以下の桁数を、同じ種類の値でそろえる(平均は小数第1位まで、など)
(この記事の数値は、説明のための架空のものです。)