考察の書き方:結果の意味を論じる
考察は、結果をくり返す場所ではなく、結果が目的と仮説に照らして何を意味するのかを論じる場所です。考察の組み立て、仮説が支持されなかったときの書き方、限界と今後の課題の書き方、よくある失敗と直し方を紹介します。
考察は、実験レポートでいちばん書き手の力が表れる部分です。結果の節でデータが示した事実を受けて、それが目的と仮説に照らして何を意味するのかを論じます。
ことばの注意:ネットでは、作品の伏線の推測や自由な想像も「考察」と呼ばれますが、学術的な考察は、結果や資料を根拠に筋道立てて検討することです。根拠のない推測や感想は、考察ではありません(「日常と意味が違う言葉」)。
考察の組み立て
考察は、狭いところ(この実験の結果)から始めて、広いところ(理論や先行研究、今後)へ広げていきます。序論が「広い → 狭い」だったのと、ちょうど逆の形です(「IMRaD」)。
- 結果の要約:目的に関わる主な結果を、一、二文でまとめ直す
- 仮説との照らし合わせ:結果は仮説を支持したか、しなかったか
- 解釈:なぜそういう結果になったと考えられるか
- 先行研究との比較:これまでの研究の結果と、どこが同じで、どこが違うか
- ほかの説明の検討:同じ結果を、別の理由で説明できないか(「演繹と帰納」)
- 限界:この実験で言えないこと、結果に影響したかもしれない点
- 今後の課題:限界から出てくる、次に確かめるとよいこと
- 結論:目的に対する答えを、短くまとめる
すべてを同じ長さで書く必要はありません。大切なのは 2〜5 です。
例
本実験では、学習後の睡眠が再生数を増やすかを検討した。その結果、睡眠条件の再生数は覚醒条件よりも多く、仮説は支持された。この結果は、覚えたあとに新しい情報が少ないほど忘却が少ないという干渉説の予測に合う。眠った場合のほうがよく思い出せたという Jenkins and Dallenbach (1924) の古典的な実験の結果とも一致する。ただし、睡眠中には記憶の定着が進むという別の説明も考えられ、本実験の結果だけでは、干渉が減ったためか、定着が進んだためかを区別できない。また、参加者は大学生40名に限られており、ほかの年代に同じ結果が当てはまるかはわからない。今後は、睡眠をとらずに新しい情報の入力だけを減らす条件を設けることで、二つの説明を区別できるだろう。以上から、本実験の範囲では、学習後の睡眠は8時間後の再生数を増やすと言える。
結果の要約 → 仮説との照らし合わせ → 解釈 → 先行研究 → ほかの説明 → 限界 → 今後 → 結論、の順になっています。
仮説が支持されなかったとき
予測と違う結果が出ても、考察の価値は下がりません。むしろ、考えるべきことが増えます。
- 結果をそのまま認める:「仮説は支持されなかった」と書く。結果を都合よく読み替えない
- 理由の候補を挙げる:方法の問題(参加者の数、課題の難しさ、条件の操作がうまくいかなかった)か、理論の問題(予測の前提が違っていた)か
- 確かめる方法を示す:その候補を、次の実験でどう確かめられるか
「実験の失敗」と書いて終わるのではなく、なぜ予測と違ったのかを筋道立てて論じることが求められています。結果を見てから仮説を書き換えてはいけません(「仮説の立て方」)。
有意な差が見られなかったときは、「差がない」と言い切らず、本当に差がない可能性と、差を見つけられなかった可能性の両方を検討します(「結果の書き方」)。
限界の書き方
限界は、思いつくものを並べるのではなく、この結果の読み方にどう関わるかと結びつけて書きます。
- 弱い:参加者が少なかった。
- よい:参加者が40名と少なかったため、条件の差が小さい場合には、それを見つけられなかった可能性がある。
限界を書くことは、レポートの弱さを認めることではありません。主張がどこまで言えるのかを、自分で正確に示すことです。
よくある失敗と直し方
| よくある書き方 | どこが問題か | 直し方 |
|---|---|---|
| 結果の数値をもう一度並べる | 考察になっていない | 要約は一、二文にし、意味を論じる |
| 「〜ということがわかった。面白かった」 | 感想で終わっている | 目的に対する答えと、その意味を書く |
| 結果の節にないデータを、考察で初めて出す | 根拠を確かめられない | データは結果に書き、考察では参照する |
| 一度の実験から「人は〜である」と一般化する | 言いすぎ | 参加者や条件の範囲に合わせて言う |
| 限界を並べて終わる | 結論が見えない | 最後に、目的に対する答えを示す |
| 先行研究に一度も触れない | 結果の位置づけがわからない | 序論で挙げた研究と比べる |
考察で使う言い方
考察では、根拠の強さに合わせて言い切りの強さを選びます(「論証」)。
| 書くこと | 言い方の例 |
|---|---|
| 結果が示したこと | 〜が示された、〜であった |
| 結果からの解釈 | 〜と考えられる、〜を示唆する |
| 別の可能性 | 〜の可能性も否定できない、〜とも考えられる |
| 今後の課題 | 〜を検討する必要がある、〜によって区別できるだろう |
解釈と結果を書き分けるには、「事実と意見を区別する」も参考になります。
(この記事の例は、説明のための架空のものです。)