方法の書き方:ほかの人が同じことをできるように
実験レポートや研究論文の「方法」は、読んだ人が同じ実験や調査をくり返せるように書く部分です。参加者・材料・手続き・計画・分析の書き方と、くわしさの目安、よくある抜けを、例とともに紹介します。
方法は、何を、誰に、どうやって行ったのかを書く部分です。目安は、読んだ人が、同じ実験や調査をくり返せるくわしさです。方法がくわしく書かれていれば、読み手は結果がどれくらい確かかを判断でき、ほかの研究者は同じ方法で確かめ直すこと(追試)もできます。
すでに行ったことなので、文末は過去形で書きます(「IMRaD」)。
(この記事の例は、説明のための架空のものです。)
方法に書く項目
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 参加者 | 人数、年齢(平均と標準偏差、範囲)、性別などの構成、集め方、謝礼の有無、除いた人数とその理由 |
| 材料・装置 | 使った刺激(単語のリストなど)、質問紙、機器。どう作ったか、どこから取ったか |
| 計画 | 何を変え、何を測ったか(独立変数と従属変数)。条件ごとに別の人が参加したか、同じ人がすべての条件に参加したか |
| 手続き | 参加者に、何を、どの順で、どのくらいの時間してもらったか。教示(参加者への説明)の内容 |
| 分析 | どのデータを、どの方法で分析したか |
| 倫理的な配慮 | 説明と同意のしかた、倫理審査を受けた場合はそのこと(「人からデータを集めるときの倫理」) |
授業によって、見出しの立て方(「参加者」「材料」「手続き」など)が決まっていることがあります。指定に従ってください。
例
参加者 大学生40名(女性22名、男性18名、平均年齢19.6歳、SD = 1.1、18〜23歳)が参加した。参加者は授業の受講者から募集し、謝礼は支払わなかった。参加者を、学習後に睡眠をとる条件と、起きて別の課題を行う条件(以下、睡眠条件と覚醒条件)に、20名ずつ無作為に割り当てた。
材料 名詞20語を用いた。単語は、なじみの程度がそろうように選んだ。
手続き 学習は夜に行った。実験室で、20語を1語ずつ2秒間提示し、覚えるよう求めた。その後、睡眠条件の参加者は実験室で8時間眠った。覚醒条件の参加者は同じ8時間を起きて過ごし、その間に別の単語リストを覚える課題を行った。8時間後(翌朝)に、最初に覚えた単語をできるだけ多く書き出すよう求めた(自由再生)。
くわしさの目安
- くり返せるかで判断する:「単語を覚えてもらった」ではなく、何語を、どう示し、何秒ずつ、何度示したかを書く
- 数字で書く:「少し時間をおいて」ではなく「5分後に」
- 教示の大事な部分は、そのまま書く:参加者にどう説明したかで、結果が変わりうるため
- 書かなくてよいこと:実験室の机の色など、結果に影響しないと考えられる細かいことは書かない
質問紙や刺激の一覧が長い場合は、本文には要点だけを書き、全体は付録に載せます。
計画の書き方
何を変え、何を測ったのかを、はっきり書きます(「仮説の立て方」)。
- 独立変数:実験で変えた条件(睡眠条件と覚醒条件)
- 従属変数:測ったもの(8時間後の再生数)
- 条件の割り当て:条件ごとに別の人が参加したのか(参加者間)、同じ人がすべての条件に参加したのか(参加者内)
よくある抜け
| 抜け | なぜ問題か |
|---|---|
| 参加者の集め方が書かれていない | 結果をどこまで広げて言えるかが判断できない |
| 除いたデータの数と理由がない | 結果を都合よく変えたと受け取られかねない(「レポートの不正」) |
| 条件の割り当て方がない | 条件による差なのか、割り当て方の偏りによる差なのかを判断できない(「誤謬」の「相関と因果の取り違え」) |
| 手続きの順番や時間がない | 同じ実験をくり返せない |
| 結果が書かれている(「〜したところ、〜だった」) | 結果は、結果の節に書く(「結果の書き方」) |
計画と違うことをしたとき
実験の途中で、予定と違うこと(参加者が途中でやめた、機器が動かなかった)が起きたら、そのことを方法に正直に書きます。計画を変えた場合も、何を、なぜ変えたのかを書きます(「研究計画書」)。