文献を読んで書くレポート:要約・書評・講読
指定された本や論文を読んで書くレポートには、内容を正確にまとめる「要約」、内容をまとめたうえで評価する「書評」、担当した箇所の要点と論点を示す「講読」のレポートがあります。それぞれの書き方と、要約と評価を分ける大切さを紹介します。
授業では、指定された本や論文を読んで書くレポートもよく出されます。課題によって、求められていることが違います。
| 課題の種類 | 求められていること | よくある課題文 |
|---|---|---|
| 要約 | 文献の内容を、正確に、短くまとめる | 「〜を読んで、要約しなさい」 |
| 書評 | 内容をまとめたうえで、主張や根拠を評価する | 「〜を読み、評価しなさい」「書評を書きなさい」 |
| 講読 | 担当した箇所の要点をまとめ、議論すべき点を示す | 「担当の章をまとめ、論点を示しなさい」 |
どの課題でも、まず文献の主張と、それを支える根拠、全体の組み立てをつかむことから始めます(「文献の読み方とノートの取り方」)。
要約:自分の意見を入れずに、正確に
要約では、文献の内容を、自分の意見を入れずに、短くまとめます。
- 文献全体の主張を、一文で言えるようにする
- その主張を支える主な理由や根拠を、二つか三つ選ぶ
- 文献に書かれている順番にとらわれず、主張 → 理由・根拠 の順でまとめる
- 原文を閉じて、自分の言葉で書く(「言い換え(パラフレーズ)」)
- 原文と照らし合わせて、意味がずれていないか、言いすぎていないかを確かめる
要約では、文献にない内容を足したり、条件を落としたりしないことが大切です。文献にない内容を足せば捏造に、条件を落とすなどして文献の主張を変えて示せば改竄にあたります(「根拠と引用」)。
書評:要約したうえで、評価する
書評では、要約に加えて、文献を評価します。書評は批評に近い文章で、書き手の判断が価値の中心になります(「「私」の視点と、私がいなくても成り立つ議論」)。ここで言う評価は、よい・悪いの好みではなく、主張と根拠を吟味することです(「日常と意味が違う言葉」)。
書評の組み立て
- 文献の紹介:書誌情報と、どんな問いに取り組んだ文献か
- 要約:主張と、主な根拠
- 評価:文献の意義と、問題点や限界
- まとめ:全体としてどう評価するか、どんな読み手に役立つか
評価の観点
- 問いは、はっきりしているか。その問いを立てる意味はあるか
- 主張は、根拠によって十分に支えられているか(「論証」)
- 方法やデータに、問題はないか
- 反対の立場や、ほかの説明に目を配っているか
- ほかの研究と比べて、何が新しいか
評価にも、根拠が必要です。「わかりにくかった」ではなく、どの部分の、どの説明が、なぜ不十分なのかを書きます。よい点を認めることも、評価に含まれます。「参加者が少ないので信用できない」のような、どの文献にも当てはまる決まり文句で評価しないようにしましょう(「批判的に考える」)。
要約と評価を分ける
書評でいちばん大切なのは、どこまでが文献の主張で、どこからが自分の評価かを、読み手が区別できるように書くことです。
著者は、睡眠中の忘却の少なさを干渉の減少で説明している(第3章)。しかし、この説明は、睡眠中の記憶の定着という別の可能性を十分に検討していない点で、課題が残る。
「著者は〜と説明している」(文献の主張)と「しかし、〜」(自分の評価)のように、文の上で区別します(「事実と意見を区別する」)。
講読:担当箇所の要点と、論点を示す
ゼミや講読の授業では、担当した章や節をまとめて報告し、話し合うための論点を示すことがあります。
- 担当箇所の要点を、章や節の組み立てにそってまとめる
- 大切な用語や概念を、文献の定義にしたがって説明する(「言葉の定義」)
- わかりにくかった所や、疑問に思った所を挙げる
- 話し合いたい論点を、問いの形で示す
発表のための資料(レジュメ)の作り方は「ゼミ発表のレジュメ」を見てください。
よくある失敗
| 失敗 | 直し方 |
|---|---|
| あらすじを順に追うだけ | 主張と根拠を中心にまとめる |
| 感想だけで、要約や評価がない | 課題が求めているもの(要約・評価・論点)を確かめる |
| 要約の中に、自分の意見が混ざる | 要約と評価を、段落や言い回しで分ける |
| 評価が好みの表明になっている | 評価の観点を決め、根拠を示して書く |
| 原文の文をつないで要約している | 原文を閉じて、自分の言葉で書く |
文献からの引用には、ページを示します(「引用の書式」)。作品や史料を論じるときの引用のしかたは「人文系の引用」を見てください。